西海市立S中図書館

2019年4月1日月曜日

新元号の出典

古代文明まで遡ると、日本と中国の間には比べものにならないくらい大きな格差があったと思います。我が国の文字も文化も政治も、すべて偉大な中国に範を取ったもので、現代に到るまで、元号の典拠がすべて漢籍だったというのも、その流れを汲むものでしょう。そもそも元号を付けるという行為そのものが中国由来。

何から何まで中国の模倣だった時代を終えて千年くらいたっても、まだその影響から逃れられない事態にいらだってのことかどうか、日本には独自の文化があるのだという自己主張をしたいのでしょうか、新しい元号の制定にあたって、出典が万葉集だということがやたらと強調されています。

別に新しい元号にケチを付けるつもりはありませんが、出典として示された文章は、対句を多用した漢文で、書いたのは日本人ですが、書き方も内容も中国文学を模したものです。具体的な情景描写というより、形式を強く意識した観念的な叙述でしょう。

中国人がこの出典の文章を読んだとき、どう感じるのか分かりませんが、せいぜい上手に真似したね、といったところではないでしょうか。

万葉集を持ってきたことを批判したいのではありません。ただ、この部分からの引用を持ってきたことで、これをして我が国独自のものだと強調する背後には、あらゆる面で中国の文明にまったくかなわなかった辺境の小国の住人の、屈折した意識があるように思います。

こんなことで溜飲を下げるようでは、本家には、まだまだかないっこないということではないでしょうか。

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