西海市立S中図書館

2024年4月23日火曜日

花と俳句 ナデシコ

撫子に道にまよいて遇いにけり 宮嵜亀(ひさし)


俳人というのは、暖かくなると外をうろうろさまよい歩くたちの人が多いようです。あるいは、春という季節が人を惑わせるのか。ここまで続けて似たような経験を詠んだ俳句を紹介してきましたが、三つ目は撫子でした。

2024年4月22日月曜日

吉村芳生展(長崎県美術館)

週末に雨が続いていたので予定していた作業ができず、この展覧会に行ってみることにしましたが、実はあまり期待していませんでした。このようなタイプの絵に対して、俗に「写真のようだ」という形容がなされることがあります。しかし、それがこうした絵の中心的な価値であるなら、最初から絵に描くのはやめて、写真にすればいいことです。

写真にはない何かがあると思っているから、わざわざ絵を描くわけです。そうであるなら、「写真のようだ」とか「本物そっくり」という評価はその絵の価値に対して何も言っていないことになります。もっとも、絵の方が本物より本物らしいということはあり得ると思います。フィクションの小説が、現実よりも現実味を感じさせることがあるように。

私は、作者の後期のカラーの花の絵より、上の写真のような、初期の白黒の風景の方がいい絵に思えます(会場は、写真撮影可でした。念のため。)。会場にあった解説によれば、花の絵の作品に作者自身が納得し切れていなかったことが伺えます。「写真のように」描くことはできるが、その先の何かが足りないと感じている作者のいら立ちのようなものが伝わってくる気がしました。


上の写真も初期の作品で、できたての新聞を転写して、鉛筆でなぞったものだそうです。作者は、同じ手法で後からカラーの作品を作っていますが、これも白黒の方がいい。

「焼き直す」という言葉がありますが、それを地で行くこの作品には、作者の絶妙なユーモアを感じて思わず笑ってしまいました。右下の解説の下に、小さな写真が添えてありますが、こうやって描いたものを1万枚コピーして積み重ねた作品だそうです。

長田弘さんの詩に、「一体、ニュースとよばれる日々の破片が、/わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。」というフレーズがありますが、それを思い出しました。「ニュースペーパー」という存在への大いなる皮肉。

カラーの作品の方は、一枚一枚の紙面が拡大されていて、実物よりもはるかに大きい上に、作者のおどろおどろしい顔の自画像が重ねられており、全体の量も膨大で、いささか狂気の方に傾いた雰囲気を感じて、私は怖くてその展示室の奥に入って行けませんでした。私の感性の限界を超えた作品ということなのかもしれません。

2024年4月17日水曜日

花と俳句 ツツジ

近道へ出てうれし野の躑躅(つつじ)かな 与謝蕪村


桃の花同様、暖かくなって山に咲く花には、つい誘われて知らない道に踏み込ませる何とも言えない力があるのでしょう。そうして脇道を歩いていったら、それがたまたま近道になっていて嬉しかったという素朴な感慨を詠んだ作品です。

ツツジが漢字ではこうなるのだというところも面白味の一つでしょう。

2024年4月9日火曜日

台車

古いカウンターを裏返して壁際に置き、下のスペースを物入れとして使っています。そこに、ブックコートフィルムを入れたコンテナを置いているのですが、重くて出し入れが不自由でした。そこで、合板にキャスターを付けた台車を作ることにしました。


構造は単純で、四角く切り出した板に、あり合わせのキャスターをネジ止めしただけのものです。


キャスターのサイズは20mm。もう少し大きい方が動きがスムーズだと思います。技術室のジャンク箱にあったものを利用したので、サイズに選択の余地はありませんでした。板は前に作ったベンチの余りを使ったので、費用はかかっていません。

2024年4月8日月曜日

花と俳句 桃の花

桃咲いて地図なき道に出でにけり 中野京子

桃の花の俳句はとてもたくさんありますが、華やかで優しいイメージで描かれているものが多かったです。そのようなイメージは、すでに万葉集の時代から存在していて、大伴家持の歌に、次のような作品があります。

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ

この俳句は、桃源郷の故事を彷彿とさせますが、現実の体験とも読めます。桃の花に誘われて思わず知らない山中に迷い込むというのは、いかにもありそうな経験ではあります。

2024年4月3日水曜日

閲覧机の修理

2月28日に、机の天板の補強金具のトラブルについて書きました。春休みになって、やっとその修理に取りかかりました。下の写真は再掲です。補強金具が浮いてしまっていました。原因は、単板側に埋められたナットが外れかけていたことです。

そこで、新たに穴をあけて、新しいナットを取り付けることにしました。


金属に穴をあけるには、技術室にあるようなボール盤があると、正確な作業ができます。
机の天板の方にも電動ドリルで穴をあけ、下の写真の鬼目ナットを打ち込みます。




古い穴には、おが屑(丸ノコなどで木を切削したときに出る木くず)に木工用ボンドを混ぜて詰め込み、鬼目ナットを打ち込みます。これで修理するという手もありますが、強度に不安が残るので、新しい穴をあけ、予備的に古い穴も使いました。
 

書架の修理のときにも感じましたが、元の設計が強度不足です。鬼目ナットは、穴を貫通させなくても使えるので便利ですが、あまり強い力はかけられません。コストダウンのために天板の厚さを抑え、その分の強度を補うために、金属のバーを取り付けているのだと思いますが、こんな取り付け方では補強の用を果たせません。

家庭用ならまだしも、学校のような場所で使うものは、少々荒っぽい扱いをしても壊れない強度が求められます。

2024年4月2日火曜日

小さなブックスタンド

楕円展示台の展示用ブックスタンドが足りなかったので、小さなブックスタンドを四つ作りました。


文庫本サイズで、1×4のSPF材1本分で作れます。スライド丸ノコと電動ドリルドライバーのおかげで、部品加工と組立はあっという間にできました。