西海市立S中図書館

2025年11月28日金曜日

デジタル化の困難~学校の場合

少し前から、県内の公立小・中学校で、C4th(シーフォース)というソフトが使われるようになりました。教師が担う日々の事務的な作業を、一つのソフトウェアの中で統合的に行えるという売り込みのソフトです。成績処理や、出席簿、通知表・指導要録の作成、他校も含めた教員間の連絡などができます。

この中に、指導記録簿というメニューがあります。これは、毎日の授業で何をやってきたかという記録をするもので、私が教師になった頃からすでに存在しましたが、以前は提出の縛りはとても緩やかでした。それが、近年、必ず提出するように求められるようになりました。管理職は、提出を受けて、これを点検しなければなりません。

C4th上でできるので、私は、かねてからそれを使いたいと申し出ていましたが、認められることはあまりありませんでした。多くの校長が、データではなくて、紙で提出せよと言うのです。たぶん、データでは見にくいし、紙の書類に慣れていると、実物がないと不安なのだと思います。中には、紙でないとコメントが書けないから、とのたまう管理職もいました。データの中に書き込むことができないというのは、パソコンが使えませんと言っているのに等しいと思うのですが、ともかく、それが認められるのは、例外的でした。

紙で提出するためには印刷の手間がいりますし、用紙の費用もかかります。データには常にアクセスできるので、いちいち提出を求めなくてもよいし、随時点検できるので、管理職の側のメリットは大きいはずです。

事務を省力化し、無駄な紙の消費を減らすことが目的だったはずの校務のデジタル化は、こうして骨抜きにされていきます。

前にも書いたかもしれませんが、出勤・退勤時間をパソコンで処理するようになったのに、出勤簿にも印鑑を押さなければなりません。そして、事務方は、毎月、月末に出勤簿をコピーして県教委に送らなければなりません。どうしてこの二つを統合し事務方の仕事を減らそうとしないのでしょうか。

どちらの例も、何のためにパソコンを導入しているのか、問題の本質を理解せず、ただ使えと言われたから使うという受け身の姿勢が根底にあるのだと思います。

ちなみに、今年度、私は非常勤になったので、このC4thのアカウントがもらえず、パソコンも割り当てられていません。大事な連絡は教頭が紙に印刷して持ってきます。パソコンは共用でもいいので、アカウントさえあれば、教頭の仕事は減るし、教頭が印刷しなかったその他の多くの連絡にも接することができます。なぜそうしないのか、不思議でなりませんが、プランを立てている人に、現場の感覚が欠如しているのだろうと言うしかありません。

こういう訳で、学校の仕事のデジタル化も、これから飛躍的に進捗するということはなさそうです。

2025年11月13日木曜日

デジタル化の困難~マイナ免許証の場合

運転免許の更新に行って驚いたことがありました。マイナ免許証の登場で、それだけ作る、従来の免許証を作る、両方作るという三つの選択肢ができたのですが、更新講習の最初に、マイナ免許証をほしい人は、普通の免許証を作るよりも20分ほど余計に時間が掛かると言われたのです。まるで、マイナ免許証は作らない方がいいと言われているように感じました。

マイナ免許証にすると、更新講習がオンラインでできると宣伝されているのですが、これは、優良運転者に限って、次回の更新から適用されるもので、さらに、私個人に関しては、次回は高齢者講習を受ける必要があるので、オンラインではできないとのことでした。

後で免許センターの人が話していた言葉の断片をつなぎ合わせると、マイナ免許証にするメリットがユーザー側にはあまりないので、警察に騙されたと苦情を言う人もいるらしく、免許センターとしては、積極的に推奨はしないということのようでした。それで、デメリットを覚悟の上で申し込むようにという話になったようです。

マイナ免許証が出てきたおかげで、免許センターの事務は繁雑になり、更新者はそれをもらうために余計な時間がかかってしまう。制度の目的はいったい何だったんだと問いたくなる事態です。

事務は簡素化し、ユーザーにもメリットが大きいとならなければ、普及は進みません。そもそもマイナンバーカードそのものがなかなか広がらず、高額のポイントを付与することでやっとカード所持者を増やしたのでした。

保険証が一体化され、生きていく上でマイナンバーカードが必須になった今、免許証も一緒にするのは、合理的なやり方だと思いますが、更新講習を受けた部屋で、マイナンバーカードだけを作るという選択をしたのは、私一人でした。今までのものと両方作った人が二人。

その三人は、更新時講習の後、他の人が免許の交付を受けて帰っていくのを尻目に、一人ずつ時間を掛けてマイナンバーカードに免許を登録する作業をしました。免許センターにとっても、手間のかかる面倒な作業であることは間違いありません。

何かをデジタル化しようというときに起こる困難の一つの典型例だと思います。これではデジタル化は進みません。国の施策なんだから、せめて免許センターは推奨の方向で話をしろよと思いますが、正反対を向いてしまっています。

学校でも、いろいろなことをバラバラにデジタル化しようとしていますが、恩恵を感じる場面はパラパラです。この領域で、国全体が世界に遅れを取っていると言われていますが、なかなか明るい未来は見えてきそうにありません。

2025年10月8日水曜日

中村 哲『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと』NHK出版、2021

最新刊ではありませんが、学校の新着図書に入っていて、読んでみたら、とても面白かったです。


大半は、中村哲氏がラジオで話した内容を文字に起こした文章から成っています。言葉は飾られたものではなくて、氏の朴訥な人柄が偲ばれます。目の前の困っている人に対して、当たり前のことをしてきただけとおっしゃるのですが、その影響は数十万人に及んでいるそうです。

アフガニスタンで、24.3kmの用水路を、重機を使わず、江戸時代の工法を参考に、現地の人々の力で作り上げたという話を聞くと、人間の内部には、現代人にはほとんど忘れられていますが、とてつもない大きさの根源的な力が潜んでいるのだと思えてきます。

編集で気になったのが、たまに活字の大きさが変えてあり、一行の文字数も少なくなっている場所があったことです。編集者が重要と思ったところがそうなっているのだと思いますが、読み手としては、話し手の言葉に余計な解釈を加えず、そのまま提示してほしかったです。

最近は、大事なところをゴシック体にしたり、最初から傍線を引いている本も見受けますが、私は、そのやり方には反対です。必要ならば、線は自分で引きたいです。著者が自分でやったのならまだしも、編集者が勝手に手を加えて、著者名を「中村哲」とするのはおかしいです。どうしてもやりたかったら、編集者の名前を前面に出すべきではないでしょうか。

2025年9月12日金曜日

『遠い山なみの光』石川慶監督、2025

仕事が短時間になり、平日に街に出る機会も多くなりました。意外だったのは、平日の昼間でも、街には人がたくさんいるということです。映画館も人気で、朝からチケット売り場には長い列ができていました。

カズオ・イシグロ氏の原作はいささか難解で、ちゃんと読めたという自信はありませんが、この映画を観て、いくつか分かったことがありました。原作よりだいぶ分かりやすくなっていると感じました。

今日は、たまたま、地元のNHKが製作した、この映画にまつわるカズオ・イシグロ氏のインタビュー番組を放送していました。原作者がここまで映画化に関与していることに驚きました。氏は、この映画は、原作小説の今の世代に向けての語り直しだと言っていました。

別のところで、イシグロ氏は、映画と小説はまったく別物であるとも語っていました。映画を作るに際して、原作を忠実に再現しようとするからつまらないものになるというのが氏の考えのようです。

いろいろ書きたいこともありますが、まだ上映が始まったばかりなので、これくらいにしておきます。見応えのある作品でした。ただし、分かりやすくなったとは言っても、内容がずっしり重いので、大ヒットするようなことにはならなさそうです。

2025年9月9日火曜日

AI作文

近ごろ、求職のためのオンラインのアプリやウェブサイトが数多くできています。多すぎて、どれを選ぶか決めきれないくらいです。私は、この4月から、仕事が非常勤になり、勤務時間がとても短くなりました。 それはつまり、収入が激減したということでもあります。そこで、いくつかのサイトに登録してみました。その中の一つは、簡単な履歴の他に、職歴の記入を求めてきましたが、自分で書かなくても、履歴に基づいてAIが職歴を書いてくれました。

以下、その引用です。


■■ 職歴概要  

私は国語教師として20年以上にわたり、中学校を中心に教壇に立ち、多くの生徒の学習指導に携わってきました。具体的には、学習指導・教材作成・クラス運営などの業務を担当してきました。

具体的には、  

・学習指導:生徒一人ひとりの理解度や興味に合わせた指導を行い、学力向上に寄与した。  

・教材作成:効果的な授業を行うために教材や問題集を作成し、生徒の理解度を深める工夫を行った。  

・クラス運営:クラスの雰囲気作りや生徒の心のケアに努め、クラスのまとまりや学習意欲の向上に貢献した。

これらの業務を通じて、私は生徒の個別ニーズに対応するコミュニケーション能力や、計画的な指導スキル、問題解決能力を磨きました。

■■ 経験・スキル  

・教育に関する深い知識と実践的な指導スキル  

・教材作成や授業設計における企画・運営能力  

・生徒や保護者との良好なコミュニケーション能力  

・クラス運営や生徒指導におけるリーダーシップ  

・教育現場で培った問題解決力と柔軟な対応力

■■ アピールポイント  

私は20年以上にわたり国語教師として、多くの生徒と向き合い、彼らの学習意欲や自己理解を促進してきました。この経験を通じて、相手の個性やニーズを見極め、それに合わせたコミュニケーションや指導を行う力を身につけました。生徒の成長を支えることに喜びを感じ、常に教育の質向上を追求してきたため、柔軟な対応力や問題解決能力も高めてきました。これらのスキルは、教育だけでなく、さまざまなビジネスシーンや人と関わる業務においても大いに活かせると確信しています。さらに、教材作成やクラス運営の経験から、企画力や組織運営能力も培っており、チームや組織の一員としても積極的に貢献できる自信があります。今後は、これまでの教育現場で培ったコミュニケーション力や計画力を活かし、多様な職場で価値を提供していきたいと考えています。


以上です。私が書いた履歴は、アンケート形式で記入するもので、あっという間に書き終わりました。教師歴が20年以上となっているのは、選択肢の最長がそうなっていたからです。それだけの内容から、数分と待たせずこれだけの職歴を作りあげたのには、かなり驚きました。満点とは言いませんが、これくらい書けば、一般的な職場なら合格点がもらえるでしょう。

数年前から、学校の仕事にもAIを活用するよう推奨されていますが、義務教育の学校の教員の作文力のレベルにも十分到達していると言っていいでしょう。授業以外の仕事を軽減するには、便利な手段ができたものです。

しかし、何といっても、これは、無から有を生んだと言っていいくらいのでっち上げです。もっともらしいことが書いてありますが、私個人の現実とは大きな隔たりがあります。最初の目的だったはずの、採用のための判断基準には、私の側から言えばなり得ないものです。これで済むのなら、そもそも職歴の提出の意味がなくなるでしょう。

産業界でも、AIの活用は喫緊の課題のようですが、これで果たして世の中がよくなるのかどうか、よく分からないというのが正直な感想です。よくならなくても、儲かればいいということなのでしょうか。

ちなみに、仕事の方は、数多くの求人が届いていますが、私の希望にかなう条件のところはまだ見つかっていません。

2025年8月31日日曜日

学校における評価のあり方について

現在、中学校では、通知表や指導要録に、各教科ごとの5段階の評定と、三つの観点別に3段階の評価がなされています。文部科学省によれば、三つの観点のうちの一つ、「主体的に学習に取り組む態度(旧学習指導要領では、関心・意欲・態度と呼ばれていたもの)」の評価を、次の学習指導要領からは、評価の点数から外すことになるそうです。

簡単に言うと、それは数値的な評価になじまないから、ということのようです。それはその通りだと思いますが、それなら、残りの二つの観点はどうでしょうか。「知識・技能」と、「思考・判断・表現」ですが、特に、後者については、評価するのはそんなに容易なことではありません。その生徒の、思考力の客観的な到達度を、どうやって点数化すればよいのでしょうか。

例えば、テストで、論理的な思考力を測ろうとしたとします。生徒は、限られた時間内で、出題者の意図を正確に汲み取り、出題者が求めている答を書かなければなりません。論理的な思考力を試そうとしながら、得点には別の要素が大きくからんでくるのです。まして、一度授業で示された問いであれば、記憶力が大きな助けになってしまい、その生徒の思考力を正確に評価することなどできません。また、じっくり考えて答を出すタイプの生徒や、文章を早く読むのが苦手な生徒も、テストでは大いに不利になります。

テストで比較的測りやすいのは、「知識・技能」だけということになりそうですが、実はこの点にも議論があります。知識というのが、水を注いで桶に水を貯めるように、少しずつ子どもの脳に蓄積されていくものであれば、ある程度測定も可能かもしれませんが、実は、ことはそんなに単純ではないようです。

記憶というのは、状況に支配されている側面があって、テストという特殊な場面で子どもがその知識を取り出せなかったことが、必ずしもその子どもにその知識が欠けていることの証明にはならないらしいのです。

そもそも、子どもの学力を1点刻みで測定して序列を付けるということ自体が、理論的な根拠に基づいてなされているわけではありません。特に、入試などのように、順位が重要になってくる場合、テストの点数で序列をつけることが公平で適切なやり方だとずっと信じられてきたというだけのことです。

今のような入試を行うためには、全国で統一したカリキュラムも絶対に必要です。その上、どの学校も、入試があるからと、カリキュラムの内容を網羅的に取り上げ、ひたすら子どもに覚え込ませるような授業に傾きがちです。こうして、学校教育が、限りなくつまらないものになっていきます。

いずれにしても、そもそも目に見えない能力や学力を正確に測るのは困難で、テストの点数という間接的な指標を使ってもっともらしい数字をはじき出しているというのが実情です。テスト以外の手段で評価することもありますが、提出物以外で、授業中にそうした評価がちゃんと行えるのは、せいぜいクラスの規模が十数名まででしょう。学校教育の質を根本から変えていくためにも、ここらで、思い切って、評価のあり方を全面的に見直すべきだと思います。

2025年8月30日土曜日

電動工具の選択

今回、床置き書架を作るに当たって使った電動工具は以下の通りです。

スライド丸ノコ(マキタ、100V)
ビスケットジョイントカッター(マキタ、充電式、14.4V)
ドリルドライバー(マキタ、充電式、14.4V)
電動ジグソー(HiKOKI、100V)
電動サンダー(マキタ、100V)

マキタもHiKOKI(旧日立工機)も、日本の電動工具の代表的なメーカーで、工具を選択しようという場合、そのどちらかにしておけば、まず間違いはありません。

以前、ジグソーやサンダーは、安価なサードパーティー製を使っていました。本体の価格が一桁違うのです。安価な分、振動など使用時のストレスが大きくなります。若いときは、それを自分の方のパワーで乗り越えていたのだと思いますが、歳を取ってみると、使い心地の差が大きく感じられるようになりました。

HiKOKIのジグソーは、昨年学校で買ってもらった最新型です。ブレードの取り付けがとても簡単になっており、使い勝手がよかったです。


かつて、RYOBIというメーカーが初心者向けに手頃な工具を出していましたが、気づいてみたら、京セラ傘下に変わっていました。手始めに、自前の工具を手に入れてやってみたいという向きにはお勧めです。

最近は、アイリスオーヤマなどの一般家電メーカーが、電動工具にも進出しているようです。ホームセンターには、それぞれ独自ブランドの工具が置いてあったりします。残念ながらどれも使ったことがないので、コメントできません。選択肢が増えすぎて、かえって選びにくくなったかもしれません。あくまで、たまに日曜大工をするというユーザー向けだと思いますが、そういう用途なら、どれを選んでも問題ないでしょう。

充電式工具もラインナップが格段に増えてきました。電圧が36Vとか40Vというのは、プロ用と思っていいと思います。私は、二十年くらい前に、マキタのインパクトドライバー(14.4V)を買いました。二十年経っても、外観はくたびれてきたものの、まったく問題なく使えています。一方、数千円のサンダーやジグソーは、何台も壊しました。

そのバッテリーが使えるので、ビスケットジョイントカッターも14.4V仕様にしました。ドライバーとしてはまったく問題ありませんが、ジョイントカッターとしては若干パワー不足を感じました。現在、マキタのラインナップは、18Vと40Vが主流のようです。

ジョイントカッターのように大きなパワーを要する工具は、100V仕様にしておけば、充電式より安いですし、パワー不足を心配しなくてよくなります。例えば、コンクリートの壁に穴をあけたければ、100Vのドリルを選択する方がいいでしょう。