西海市立S中図書館

2012年5月23日水曜日

イーライ・パリサー『閉じこもるインターネット』井口耕二訳、早川書房、2012

衝撃の一冊。


って、大げさじゃないかもしれません。

グーグルの検索が、こちらの探したいものを先取りして示してくれて、さらに探しているものによくヒットすると喜んでましたが、どうも喜んでばかりはいられないようです。

私たちが普通に使えるコンピュータが登場したとき、「パーソナル」という言葉が頭についていて、確かに、個々の必要に応じていろいろカスタマイズできるその柔軟性が、例えばワープロ専用機なんかとは違っていて、少し扱いにくい分、用途は様々に広がる可能性を持っているということで納得したつもりになってました。

インターネット上には、あれよあれよという間に膨大な情報が載せられて、紙の辞典や書籍の資料価値が日に日に薄れていくというのも感じていたところです。

一方、最近のことですが、ネット上の広告技術が発達しすぎて、ランダムに出てくるのではなくて、自分の興味関心にひっかかりそうなものが優先的に表示されるようにもなってきていました。

グーグルの検索結果は、誰がやっても同じと言うことにはならないのだそうです。

私が好むもの、私がよく話題にし、よく検索するものなどをデータ化しておいて、それによって何を示すか決められていくとのこと。

ここで著者は、私たちが、自分の好むものばかりに囲まれた世界の住人になってしまうことを危惧しています。

嫌いなものは、自分で見なくする以前に、アルゴリズムによって排除されて、私たちの目に触れなくなる。

これって、とんでもないできごとじゃないでしょうか。違った意見をすりあわせるどころか、違った意見の持ち主は、ネット上では接点を持たなくなってしまうのです。

ここから抜け出す手段があるのかどうか。最後に述べられた筆者の見解では、いささか心許ない気がします。この先、ネット社会にどんな未来が描けるのか、うんと考えさせる一冊でした。

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