「14歳の世渡り術」シリーズ。同じ著者に、『右翼と左翼はどうちがう?』(2007)『14歳からの原発問題』(2011)がありますが、いずれも好著です。
この春に、お笑い芸人の母親が生活保護を不正受給したのではないかという疑いで騒ぎになったことは記憶に新しいです。
この本に出てくる弁護士によれば、
1 子どもには、親に対する強い扶養義務はない。
2 お笑い芸人のK氏は、福祉事務所と相談して一定額を母親に仕送りしていた。
3 母親は、その上で、不足分を生活保護費として受け取っていた。
ということで、法的にも手続き上も、何の問題もなかったはずだという解釈でした。
しかも、生活保護全体で、不正受給は0.4%程度。その中には、知らずにやっていた高校生のアルバイト代が所得と見なされ、不正と判断されたなどのケースもあるとのこと。
言葉の意味から直接想像されるような、不当な受給者は、100人に1人もいないということになります。
むしろ、受ける権利があるのに受けていない人の数の方がはるかに多いということでした。そうなる原因の一つに、役所がなかなか手続きを取ろうとしないという事情もあるようです。
この本には、生活保護を受けようとしていたのに、役所の窓口で断られ続け、亡くなった方の例がいくつか紹介されています。
国会議員もマスコミも、制度とその実情をよく理解しないままバッシングに走ってしまった、というのが本書のあの騒ぎへの理解です。
昨日、たまたま、生活保護にかかる国家予算が急激に増えているとの報道を耳にしました。
だから、生活保護の水準を切り下げるべきなのでしょうか?
すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
(憲法第25条)
バブルがはじけ、不景気が続いたら、「健康で文化的な最低限度の生活」すら危うくなるのでしょうか。
「最低限度の生活」とは、やっと食べていけるだけ、という意味だったのでしょうか。
私たちが目指していたのは、もっと豊かな国だったはずです。たとえば、身近なところに図書館があって、いつでも利用できる、というような。
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