西海市立S中図書館

2015年3月8日日曜日

クリント・イーストウッド監督『アメリカン・スナイパー』2014

イラク戦争に従軍した狙撃手を描いた2時間半の大作。戦闘場面と、母国での家族の場面が交互に映し出されます。最初から最後まで、重苦しい気分が抜けません。おまけに、戦場の傷からやっと回復しつつあるように見えた主人公は、最後、理不尽に殺されてしまいます。

アメリカン・ヒーローを賞賛する伝記的作品と観る向きもあって、一方には、いやそうじゃないんだ、という人もいるようです。確かに、この作品は、両様に観ることができそうです。私は、最初と最後の描き方から、やや前者より。

戦争の非情な現実はしっかり描き込まれていました。

だが、なぜ、この戦いは始められなければならなかったのでしょうか。また、戦場の悲惨さを家では話せない主人公と、その妻との間の確執については、同じような会話が繰り返されるだけで、深まっていきません。それは、主人公の精神の回復過程にも言えます。

一番最初の場面で、主人公の口から、わざとそうしたかと思えるくらい単純なアメリカ的正義観が披露されますが、その価値観が、作品を通して相対化されたでしょうか。

戦闘で勝つには、敵を悪者と思わなければならない、という意味のセリフが出てきました。しかし、実際はそう単純に言い切れないところに、主人公の苦悩の原因の一つがあったはずです。そこに主人公は気づいていたのでしょうか。

決して悪い映画ではないのですが、そこらあたりがこの映画の限界に思えました。

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