西海市立S中図書館

2017年1月24日火曜日

内藤正典『となりのイスラム』ミシマ社、2016

たいへん分かりやすい内容です。


これを読むと、私たちの世界に関する認識のほとんどの部分が、近代ヨーロッパの世界観に由来するものだということがよく分かります。そして、それは、私たちが思っているほど普遍的なものではないということも。

例えば、自由と人権の国フランスで、なぜあれほどイスラム教徒のかぶるスカーフが忌避されるのか。

著者の解説を読むと、近代西欧の価値基準でイスラム世界を理解することは、不可能なのだと分かります。その価値を創出した本家のフランスでは、その価値の対立が、もっともラディカルに現れてしまうのでしょう。

所詮、私たちの他者理解は、その程度のものなのかもしれません。異質な世界に属する他者の行動が理解不能に思えるとき、私たちはそれをあわてて断罪するのではなくて、まず沈黙して、それからゆっくり理解の糸口を探すべきなのかもしれません。

最後には、イスラム教徒と付き合うときの極めて具体的な注意書きがあります。周囲にイスラム教徒の知り合いがいたらぜひ読んでみてください。

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