どちらも人気のあるアニメ作品ですが、『君の名は。』が、ロングランとなり莫大な収益を上げている割には、通には人気がないらしくて、例えばキネマ旬報の年間ベスト・テンには入らず。一方、『この世界の…』の方はキネ旬日本映画ベスト・テン第1位。それ以外にも多くの賞をもらってます。
そもそも、お金の掛け方に桁違いの差があることは、ちょっと見にも明らかです。『この世界の…』の方は、何十年か前の素朴なアニメといった風情の安い造りです。それにも関わらず、人気はかなりあるようで、この手の作品だったら、上映されてもすぐに消えることが多い地方都市の映画館で、11月に公開されて、まだ上映が続いています。
物語は、第二次世界大戦前の社会を背景にしながら、淡々と進行します。そこに描かれているのは、私たちのノスタルジーをかき立てる素朴な世界と、そこに生きる純朴な主人公、それにその周辺の人々です。
痛々しいような幼さを持ちつつ結婚した主人公が、限りなく優しく思える夫との間に繰り広げる生活は、誰にとっても生きることが困難であったような時代にあって、常に前向きでした。
しかし、それも、時限装置の仕組まれた爆弾による姪の死によって怪しくなります。さらに、それに追い打ちをかける原爆被害、終戦と戦後の混乱。
いったんは実家に帰ることを決意しかけた主人公ですが、最後は夫の元へ戻り、また暮らし始めます。
派手さはまったくないし、込み入った仕掛けもまったくないのですが、抑制の効いた物語の展開がじわっと感動を呼ぶ佳作でした。
『君の名は。』の方は、突拍子もない設定で、人物の入れ替わりが起こったりしているのですが、その発想の好悪はともかくとしても、二つの場面の話の繋がりが無理矢理で、展開にスピード感はあるものの、丁寧な説明は端折られており、矛盾点も目につくので、総合的な作品の仕上がり、ということになると評価がぐっと落ちてしまうのでしょう。
まあ、そんなうるさいことを言わずに楽しめばよいと思えば、なかなか楽しめる作品だったかもしれません。あまり期待せずに観たのですが、期待以上でした。
この二つの作品に共通しているのは、私たちの心の中にある原風景がくっきりと描かれていることでしょうか。その一つは、近代化が世間の隅々まで行きわたる前にあった懐かしい景色。もう一つは、戦争や自然災害によってもたらされる大きな欠落とそこで亡くなった人々への鎮魂。中心にいるカップルの純粋な愛情。
アニメの中に出てくる「リアル」な情景の描写は、私には今ひとつ理解できません。細部を捨象して描くのがアニメの本質と思うのですが、妙にリアルさを追求してしまい、ときどき陳腐な売り絵のようながっかりする画面が登場すること。これは、どのアニメ作品にも共通する欠点かもしれません。
そもそも、お金の掛け方に桁違いの差があることは、ちょっと見にも明らかです。『この世界の…』の方は、何十年か前の素朴なアニメといった風情の安い造りです。それにも関わらず、人気はかなりあるようで、この手の作品だったら、上映されてもすぐに消えることが多い地方都市の映画館で、11月に公開されて、まだ上映が続いています。
物語は、第二次世界大戦前の社会を背景にしながら、淡々と進行します。そこに描かれているのは、私たちのノスタルジーをかき立てる素朴な世界と、そこに生きる純朴な主人公、それにその周辺の人々です。
痛々しいような幼さを持ちつつ結婚した主人公が、限りなく優しく思える夫との間に繰り広げる生活は、誰にとっても生きることが困難であったような時代にあって、常に前向きでした。
しかし、それも、時限装置の仕組まれた爆弾による姪の死によって怪しくなります。さらに、それに追い打ちをかける原爆被害、終戦と戦後の混乱。
いったんは実家に帰ることを決意しかけた主人公ですが、最後は夫の元へ戻り、また暮らし始めます。
派手さはまったくないし、込み入った仕掛けもまったくないのですが、抑制の効いた物語の展開がじわっと感動を呼ぶ佳作でした。
『君の名は。』の方は、突拍子もない設定で、人物の入れ替わりが起こったりしているのですが、その発想の好悪はともかくとしても、二つの場面の話の繋がりが無理矢理で、展開にスピード感はあるものの、丁寧な説明は端折られており、矛盾点も目につくので、総合的な作品の仕上がり、ということになると評価がぐっと落ちてしまうのでしょう。
まあ、そんなうるさいことを言わずに楽しめばよいと思えば、なかなか楽しめる作品だったかもしれません。あまり期待せずに観たのですが、期待以上でした。
この二つの作品に共通しているのは、私たちの心の中にある原風景がくっきりと描かれていることでしょうか。その一つは、近代化が世間の隅々まで行きわたる前にあった懐かしい景色。もう一つは、戦争や自然災害によってもたらされる大きな欠落とそこで亡くなった人々への鎮魂。中心にいるカップルの純粋な愛情。
アニメの中に出てくる「リアル」な情景の描写は、私には今ひとつ理解できません。細部を捨象して描くのがアニメの本質と思うのですが、妙にリアルさを追求してしまい、ときどき陳腐な売り絵のようながっかりする画面が登場すること。これは、どのアニメ作品にも共通する欠点かもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿