西海市立S中図書館

2020年6月11日木曜日

笠打ち敷きて

『おくのほそ道』の平泉の段に、芭蕉が高館を訪れ、昔を思って感慨にふけるという場面があります。

原文に「笠打ち敷きて、時のうつるまで涙を落としはべりぬ」とあるのですが、この「笠打ち敷きて」というのはどんな動作なのかという質問が生徒からありました。

「笠を敷いて」という言葉自体の意味は、そのまま理解できるので、この部分には、これまでまったく疑問を持ったことはありませんでした。

しかし、よく考えてみると、「笠」を敷いて何をしているのか、よく分からない表現です。当然、座っているのだと理解していました。図書館などでいくつか現代語訳を見てみましたが、ほとんどが、ただ「笠を敷いて」とそのまま書いてありました。

そんな中に、ネットで詳細な注釈と訳を公開している伊藤洋さんという方が、次のような訳を書いていました。

旅笠を脇に置いて、草むらに腰を下ろし、長いこと涙を落としていたことだった。

これが一番もっともで、この部分の動作が具体的によく分かる訳だと思います。実は、訳はないのですが、マンガで古典の世界を描いた作品の中には、この訳にあるような様子が描かれているものがありました。

単純に文章の意味を理解するということも、なかなか簡単ではありません。こういう質問をしてくれる生徒がいるというのは、とてもありがたいことです。 

2 件のコメント:

  1. 意味がよくわかりました!!ありがとう〜!

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  2. コメントありがとうございます。多少なりとも参考になりましたら幸いです。

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