ちょうど統計について書こうと思っていたら、国語の大問4で、「朝食と学力」「朝食と体力」の調査結果(文部科学省調べ)のグラフが問題になっていました。
問三では、調査をさらに進めるとしたとき、目的に合わないものを次の選択肢から一つ選ぶことになっています。
ア 朝食と作業の能率との関係を調べるために、朝食摂取の有無と簡単な作業を行った結果との関係を調査する。
イ 朝食を食べない理由に他の生活習慣が関係していないかを知るために、起床時間等をアンケート調査する。
ウ 資料①と②の関連性を確認するために、朝食摂取の有無に関わりなく生徒の学力と体力の関係を調査する。
エ 朝食と体力の関係をより明確にするために、朝食摂取の有無で点数がどう変化するかを同一人物で調査する。
問三は、新傾向の問題として、調査統計の方法まで踏み込んだ設問を出したという点は評価できます。
さて、みなさんはどうされますか。アとイは目的にかなっていると、すぐ分かります。アは、学力や体力が関係あるとして、他にも類似のことがらで関係を見いだせるのではないかという調査。イは朝食を食べないことの理由を探る調査。
と来たら、もう一つ、他の生活習慣等と、学力や体力の関係はどうかという調査が必要になりませんか。この調査結果から、「朝食を食べるべき」という教訓を導きたいなら、イよりもむしろそちらの方が必要かもしれません。
いずれにしても、それは選択肢にない。するとウの調査が、学力と体力に及ぼす他のファクターの有無を調べるために浮かび上がってきます。「資料①と②の関連性を確認するために」「朝食摂取の有無に関わりなく」ということで、出題者は二重に不適切な答だと言いたいのでしょうが。
エは、具体的にどうするか、想像してみるとすぐ分かりますが、実際には調査が困難な方法です。また、調査の時間間隔があくと、調査対象の人物の条件が変わってしまうかもしれないし、実施したとしても意味のある結果を得られると期待できません。
したがって、私はエも不適切と考えますが、回答例はウになっています。方法ではなくて目的を問うているのだ、という理由付けは可能でしょうが、正解とするなら当然方法も適切でなければなりません。
こういうことになったのは、もとの調査結果から、朝食を食べると学力や体力が向上するという因果関係を読み取ったからではないかと思われます。そして、それが自明のことだと思ってしまった。
問題に示された調査結果は、これらの要素に相関関係があることは示していますが、そこに因果関係があるとは限りません(『トンデモ科学の見破りかた』参照)。なぜなら、両方にプラスに働く第三の要因があるかもしれないからです。それを考慮に入れず、朝食と学力・体力を安直に結びつけるのは、科学的な態度とは言えません。
ただし、私が受験生だったら、迷わずウとします。国語の受験問題を解くとき、余計なことは考えない方がいいというのが鉄則だからです。近視眼的な方が点数が取れるのです。選択肢の書き方から、ウを正解にしたがっている出題者の意図を汲み取るというのが正しい受験生の在り方。
時事ネタということで書きましたが、読書と学力の相関について、同じような視点で考えていることがあるのです(この稿続く~結論は見え見え?)。

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