昨年2月25日に、アンパンマンを引き合いに出して選書のことを書きました。そこに書いた、子どもの読みたい本と、大人が読ませたい本のずれは、図書館員にとって、永遠の課題だと思ってます。
アマゾンで調べたら、昨年10月の没後に、絵本以外で3冊の著書が出版されていました。その中の一冊です。オリジナルは、ポプラ社の「未来のおとなへ語る」シリーズの一冊として、2009年に出版されたものです。
正義とは何か、ということが、やさしい語り口で正面から論じられている一方で、アニメのキャラクターの作り方にも言及されています。メイキング・オブ・アンパンマン、だと言ってもいい内容です。
アンパンマンが世に出たときは、大人にはまったく不評で、最初は3~5歳の幼児に評価されて、それから注目を集めるようになったそうです。
アンパンマンに描かれた正義のあり方、作者本人に解説してもらうと、それがとてもよく分かります。何も、アンパンマンを道徳の教科書のように読めと言っているわけではありません。
面白おかしい単純な筋書きの中に、作者の思想が十分書き込まれているのだということがよく分かりました。
正義を行うということは、何らかの犠牲をともなうものであること。切羽詰まった場面で、自分の食べ物を、あるいは自分自身を人のために差し出すことができるのがヒーローだということ。やなせたかしさん、ヒーローにはならない方がいいんだ、とも書いてます。
V.E.フランクルが「もっともよき人々は帰らなかった」とどこかに書いてました。そんな場面でよく生きようとすると、生き延びられません。自分だったら、と考えると、生き延びる方を選択するだろうと思います。
ただ、大声で正義を叫ぶ輩には用心しなければ、と思います。正義は、やなせさんの言うように、ひっそりと実現させるものだと思っています。
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