光村の中学校国語教科書(2年生)に載っている小説「盆土産」(三浦哲郎)には、次のような目標が掲げてあります。
・作品の構成や登場人物の描写に着目して、人柄や心情を読み取る。
・作品に描かれている優しさや温かさなどを、表現に即して読み味わう。
どの物語の目標も、人物像や人物の心情及びその変化を読むことと、作品世界を読み味わったりそこに提示された状況について考えたりすること、という二つがセットになっています。
ここで、例えば心情を読もうとした場合、国語科の学習が言語の学習であるとすれば、あくまでも、それがどのように表現されているのかということが問題にされなければなりません。目標の中にも「描写に着目して」と、ちゃんと書いてあります。
ところが、しばしば、国語科の授業の中では、安直に登場人物の心情を問うて、描写の問題がおろそかになってしまっているのです。それが、国語の授業が道徳の授業のようだと指摘されることの原因です。作品を読み味わったり考えたりするという目標が、その傾向をさらに助長します。
もし、作品を読み味わい、情操を育てることこそが文学作品を読むもっとも大事な目的だとしたら、最終的に点数で評価される現在のような形の一斉授業にはなじみません。生徒の好みに従って、ゆるやかな読書指導をすればよいことになります。
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