西海市立S中図書館

2020年6月6日土曜日

恩師のこと

大学生のとき、卒論を指導してもらった教授には、様々な顔があって、未だにその人の全体像を理解することはできないでいます。

一番印象に残っているのは、ある雨の日のできごとです。できたばかりの大学で、まだ学内のあちこちが工事中でした。そこに、泥にはまって動けなくなった車がいたのです。先生と二人で歩いていた私は、思わずその車を避けて通ろうとしたのですが、その先生は、スーツ姿のまま、少しのためらいもなく、その車を押して助けようとしたのです。実際に押す前に車は抜け出すことができたのですが、私にはとても真似できないと思ったことを覚えています。

部落解放同盟の支援者で、その先生の回りには、解放同盟の活動家がよく集まってきていました。でも、一緒に何か活動をしているという風には見えなくて、ただひたすら碁を打っていたりしたものでした。

ユングの性格論や、血液型占いが好きでした。その他にも様々な眉唾理論が授業の中でまともに取り上げられていました。

在家得度をしていて、お経を読むし、法華経についての本を出したりもしていました。一方で、キリスト教にも深い関わりがあって、定年前に退職し、自分のマンションを売り払ったお金で、キリスト教の理念に基づいて施設を作っていました。

統一原理研究会の学生が近寄って来たこともありましたが、排除するようなことは一切なく、真剣に議論し、他の学生以上に大事に扱っているようにも見えました。

大学の講義の試験について、「階段から答案を飛ばして採点しているという噂があるが、私はそんな面倒なことはしない」とうそぶいていました。

講義の後には、私は必ず喫茶店でコーヒーをご馳走になっていましたが、店に来ている他の女子学生について、根拠のない噂話をしたりしていました。私自身については、自分のよくないところばかり似ているなどと言われていました。

私は、間違いなくその先生の一番近くにいましたが、ついにちゃんとした理解者にはなり得ませんでした。まったく不肖の弟子です。

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