これもまた強烈な一冊です。
兵庫出身の著者の現在の居住地は、私の家のほど近くにあります。そして、著者の近所には、「おじさん」と呼ばれる猟師が住んでいるというのです。猟師の住まいは、山奥か、せいぜい里山にあると勝手に思い込んでいました。街の真ん中とは言いませんが、市の中心部まで車なら10分とかからず行けるところです。
「おじさん」は主に罠を使ってイノシシを捕まえているそうです。知り合って肉をもらうようになった著者が、猟に連れて行ってもらったときの経験が書かれています。
2人目の登場人物は、犬と猟銃を使って猟をする猟師です。猿回しを仕事にしている人だそうです。同じイノシシ猟でも、罠と猟銃で仕留めるのとでは、かなり違っていることが分かります。
最後に出てくるのは、伝統的な手法で皮を鞣す職人です。人工物は使わないので、鞣した皮は食べ物にもなるそうです。実際、戦国時代の武士は、皮を戦場に持っていき、包帯として使ったり、非常食として食べたりしていたようです。また、そのまま畑に撒けば、すべて自然に還るということでした。
こうした職業が現在も残っていることに驚きましたが、かつて「穢れ」を扱う人々が差別されていたことを思い出しました。
生き物の命を絶ってそれを食べ、また皮を利用している私たちですが、この本を読むと、獣の命を奪う現場には、容易には踏み込めない壮絶なものがあることが分かります。昔から、それは、私たちの日常生活とは相いれないものだったのだろうと思います。だから、その世界との間に境界線を引いた。それに携わる人たちとも、また交わらないようにした。そういった事情が差別の背景にあったのではないかと思いました。
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