西海市立S中図書館

2011年10月1日土曜日

グスコーブドリの伝記~地球温暖化と気候変動

ある晩ブドリは、クーボー大博士のうちをたずねました。
「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか。」
「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、たいてい空気中の炭酸ガスの量できまっていたと言われるくらいだからね。」
「カルボナード火山島が、いま爆発したら、この気候を変えるくらいの炭酸ガスを噴(ふ)くでしょうか。」
「それは僕も計算した。あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」(宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』から)


今日は、教員免許更新講習で長崎大学へ。水産・環境科学研究科の河本和明先生の講義でした。

講義の中で、『グスコーブドリの伝記』の話がでてきました。すでに賢治が二酸化炭素の温室効果について知っていた(!)こと。一方、大規模な火山の噴火は、噴煙が太陽光を遮って、一般的には気温の低下を招くこと(ピナトゥボ火山の場合、地球全体の平均気温が約0.5℃低下)。

この作品の中でクーボー大博士の予測が、現在の知見からすると間違っていたからといって、『グスコーブドリの伝記』の価値が損なわれるとは思いません。

賢治の作品世界の独自性は、そんなことを問題にする必要のない奥行きがあると思ってます。ファンタジーとしてね。

それはそれとして、講義の内容には別のおもしろさがありました。地球温暖化のメカニズムが、地球が太陽から受け取るエネルギー量の計算式などによって詳しく示され(難しかったですが)、常識的に単純化して考えていたことが、実は正確なものではなかったことが分かりました(やさしく説明できないですけど)。

私がこの講座を選んだ理由は、地球温暖化説への懐疑論(武田邦彦さんなんかの)って、実際のところどうなの、っていう問題意識があったからなんですが、講義の中で懐疑論への直接の批判はなかったものの、資料の中に、懐疑論への批判が紹介されてました。

http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho


PDFファイルでダウンロードして読めます。今日の講義よりはやさしく読めそうです。

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