西海市立S中図書館

2011年10月12日水曜日

藤原聖子『世界の教科書でよむ<宗教>』ちくまプリマー新書、2011

あなたの宗教は何ですか?という問いに、以前は、無宗教だと答えてました。最近は、尋ねられたら仏教徒だと答えると思います。日常的に何かやってるわけじゃないですが。


この本の中では、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国のそれぞれの「宗教」かそれに準ずる科目の教科書と、授業での扱い方が紹介されています。

ときどき日本のことも出てきますが、最後のところで、日本では ①過去のこと、開祖のことを学ぶ ②キリスト教と仏教が中心 ③イエスやブッダに学ぶというスタイルが特徴的 だとまとめられてました。あー、日本の教科書って、これよね、と思いました。宗教に限らず、です。

さらに、日本のある高校教科書(世界史)では、ユダヤ教が形式主義でだめだったところにヒーローとしてイエスが登場し、ユダヤ教徒からの訴えで逮捕・処刑されたという記述になっているのに対して、人口の半数がカトリック教徒のフランスでは、ユダヤ教徒よりもローマ帝国がイエスを快く思わず、イエスの逮捕・処刑が起こるという書き方になっているそうです。

どうも日本の教科書には独特の味付けがあるみたいです。さらに、日本では、いろんな宗教の行事をごちゃまぜに取り入れることは平気でも、現在生きている宗教についての突っ込んだ話は避ける傾向があるようです。

「おくんち」は諏訪神社のお祭りですが、ほとんどの人は宗教行事と思っていないでしょう。伝統行事として、カトリックのシスターたちもたくさん出歩いてます。

普段、半ばタブーのように扱っているからこそ、宗教にかかわる突出したできごと(オウム真理教の事件や、イスラム教徒のテロ事件)に対しては、表面的で感情的な反応が起こりがちなのかもしれないと思いました。

宗教はあまり信じないけど、ほとんど迷信としか言いようのない血液型性格診断や星座占いは広く信じられている、不思議な国です、ここは。

今後、日本の学校にも宗教の時間が始まるとは想像しにくいですが、 少なくとも、ここに並んでいる国々のすべてで、教科書では、他の宗教に対しての寛容が強調されていたとのこと。

宗教対立のために世界の世情が不安定なように見えてますが、この本を読む限りでは決してそういうことではないようです。これ、読みやすいけど、なかなかすごい本かもしれません。

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