西海市立S中図書館

2012年3月6日火曜日

養老孟司・隈研吾『日本人はどう住まうべきか?』日経BP社、2012

長崎県美術館を設計した隈研吾さんと、養老孟司さんの対談です。


東京に行ってうろうろすると、巨大な高層ビル群に圧倒され、これを作るための巨万の富はいったいどこから出て来るんだろうかといぶかしく思うことがあります。

経済を論じた本ではありませんが、高層マンションなんかが商売として成り立つからくりが、これを読むと少しわかりました。

長崎県美術館の、運河の手すりのエピソードも出てきます。

何より私が印象に残ったのは、隈さんの次の言葉。

ギリシャのパルテノンは、列柱の間隔や径が実は1本1本違うんです。等間隔に並んでいなくて、一番外側の二つの柱の間隔は、他の柱の間隔より少し広くとってあります。・・・古代ギリシャ人は、純粋さを理屈で追求する幾何学的精神と、理屈を超えた一種の泥臭い経験とのバランスが、すごくよく取れています。これが古代ローマになってくると、理屈が、つまり脳が先走って、その体感的なバランスがくずれてくる。

これを読んで、平湯モデルの設計のことが浮かんできました。単純な計算では決して生まれてこない、絶妙なライン。

平湯先生がプランを立てるとき、手書きであることも、思った以上に重要なことなのかもしれません。

これも隈さんの言葉ですが、設計用のCADソフトを使うと、ソフトの動きに設計が引きずられてしまうんだそうです。

大地震後のさまざまなジャンルの出版物の中で、これだけ鋭く本質的な問題を突いた本は、案外少なかったかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿