西海市立S中図書館

2015年11月24日火曜日

毛利甚八『「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法』、講談社、2015

読みたい本はいつもたくさんあるのですが、なかなか片づきません。この本も、10月に書店で見つけ、買っておきながら手がつかずにいました。


やっとこの日曜日にページを開いて、読み始めた矢先に著者の訃報を目にしました。

著者が存命中に読んでおきたかったと、少し後ろめたい気分を感じてしまいました。そうしたからといって、何かが変わったわけではないのですが。


そもそも本のタイトルに「遺言」と書いてあったのです。私はたぶん、そこよりも、サブタイトルが最初に目に入ってこの本を手にしたと思います。

少年法の本質的な意味を説くのがこの本の趣旨ですが、著者の回想にも多くのページが割かれていて、『家栽の人』の原作を書くに至ったいきさつや、それに対する裁判官や司法関係者の反応なんかも書かれています。このマンガを読んで司法の世界を志した人もたくさんいたそうです。

私はあまり他のマンガを読んでいませんが、『家栽の人』は二十年くらい前に読みました。著者が言うように、実際の家庭裁判所がマンガのような場所ではないということは、この数年で嫌というほど経験しました。教育委員会や、学校もまたしかりです。

このマンガが書かれてからずいぶん時間がたちましたが、たぶん現実はちっとも変わっていません。著者が言うように、それだからこそ、このマンガの存在価値があるのだと思います。


今日は、日本の教育への公的支出が、OECD加盟国中5年連続で最下位であったとのニュースを目にしました。教員の給与も減り続けているそうです。財務省はもっと支出を減らせと言ってます。

子どもたちのことを誰が真剣に考えてくれているのでしょうか。少なくとも、現政権を担っている政治家がそうでないことは明らかです。少子化が進行し、それが重大な政治課題になっているにもかかわらず、です。


この本には、裁判官ではありませんが、著者の他にも、子どもたちのために奔走している実在の人物が登場しています。『家栽の人』は、裁判所への取材もなしに(できずに)書かれたまったくのフィクションだったそうですが、主人公の桑田判事のような人が、現実にもたくさんいるのだと信じようと思います。


著者の御冥福を、心からお祈りします。

(追記)『家栽の人』を私は『家裁の人』であるとずっと誤認しておりました。この本を読んでいるときに、たまたま、日本語を学んでいるALTのCさんから、この漢字について質問を受け、自分の誤解に気づきました。著者には大変申し訳ありません。タイトルと文中の表記を書き換えました。(12月9日)

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