西海市立S中図書館

2020年5月2日土曜日

本と図書館と司書の記憶 2

私の行った大学は、都市部から何もない田舎に移転したばかりでした。図書館には、当時はまだ珍しかった磁気処理による管理システムが入っていました。移転に際して、古い校舎から持ってきた蔵書には、重複がたくさんあり、整理が進んでいませんでした。複数の研究室で、同じ全集や雑誌を買っていたせいらしかったのですが、特に雑誌は、何セットもあるのに欠番が多かったり、それぞれのセットで買われた時期がまちまちだったりしました。

学部生の頃は、授業にはあまり行きませんでしたが、本はたくさん読みました。ただ、図書館にあるものではなく、自分で買ったものを読んでいました。私が読みたかったものは図書館にはあまりなかったという事情もありました。

卒業後、就職する気がまったくなくて、仕方なく進学しましたが、一転して授業にはちゃんと通うようになりました。少人数のゼミが中心だったことが幸いしたのかもしれません。欠席するとすぐ分かってしまいますから。

三浦つとむという在野の言語学者がいますが、その人の影響で、時枝誠記を研究しようと思い立ち、図書館にもよく通うようになりました。主要な書籍はすぐに揃い、雑誌論文を集めていました。

岩波書店から出ていた時枝誠記の著作に付録していた論文目録よりもはるかに詳しい目録を大学ノートに作っていましたが、存在は分かっているのに見つからない論文がいくつかあって、司書に相談していました。

すると、ある日、その頃住んでいたアパートの郵便受けに、探していた論文が見つかったというメモが入っていたのです。仕事の帰りに、司書がわざわざ立ち寄ってくれたのでした。スマホや携帯電話はまだ存在せず、有線の電話ですら学生が持っていることはほとんどなかった時代です(何だか大昔のことみたいですが、40年くらい前のこと)。

今思えば、どうして住所が分かったのか不思議です。当時は、個人情報の管理が甘かったので、学生課に聞けば教えてくれたのかもしれません。

それにしても、司書というのはこんな仕事の仕方をするのだと驚きました。司書という仕事のありがたさをしみじみ味わった経験でした。

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