野葡萄の実のふぞろひに色づけり 倉田静子
暑い暑いと思っていたら、すでに10月も半ばになり、秋の草花が見られるようになりました。
作品は、目にしたものをそのまま言葉にしただけに見えますが、「ふぞろひ」がポイントでしょう。
「ふぞろい」と言えば、40年前にはやった「ふぞろいのリンゴたち」というテレビドラマを思い出します。それがあるおかげで、この俳句の「ふぞろひ」が陳腐に感じられてしまいますが、作者は50年前に亡くなっています。歌人の中村憲吉の妻だった人で、早世した憲吉とは違って、長生きでした。
不揃いなものにも価値があるというものの見方は、このドラマをきっかけに世間に広まったのだと思いますが、そうなるよりだいぶ前に、山中にひっそりと実っていたであろう野葡萄の「ふぞろひ」に目を留めた作者の感受性の豊かさに感銘を受けます。
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